仮想通貨法の成立がビットコインに与える影響を考える

f:id:urj:20170517182955j:plain

2017年4月1日、「情報通信技術の進展等の環境変化に対応するための銀行法等の一部を改正する法律案」(いわゆる仮想通貨法)が施行されました。これにより、ビットコインを代表とするさまざまな仮想通貨に関する取引が法律で規定され、その運用やシステムなどに今後影響が出てくると思われます。

そこで今回はこの仮想通貨法についてわかりやすくご説明します。

2016年5月に可決された「仮想通貨法」

仮想通貨法は2016年5月に国会で可決され、2017年4月から施行された仮想通貨の取引に関する法律です。仮想通貨取引に関するさまざまな規定が定められ、関係する事業者や取引を行う個人などに多くの影響を与える内容となっています。

この仮想通貨法の主な要点を以下ピックアップしてみましょう。

「仮想通貨法」の具体的な内容とは?

仮想通貨の定義

そもそも仮想通貨とは何なのかを定義しています。法律に定める仮想通貨とは以下の2点を満たしているものを指すことと定義されました。

・モノの購入やサービスの提供に対する対価として決済可能な価値のあるもの ・既存の法定通貨と交換することができるもの

これにより、ビットコインは仮想通貨であると国から正式に認められたことになります。また、nanacoやsuicaなどの電子マネーは法定通貨との交換ができないため仮想通貨ではありません。

税制の定義

仮想通貨により得た収入は課税対象となり、会計上は資産として扱われます。ビットコインによる決済を可能とする店舗やサービスなどはこの点に留意することが必要です。

取引事業者の事前登録

「仮想通貨交換業」を営むには、事前に国への登録が義務付けられました。無登録で事業を行った場合には処罰対象となります。

これにより、すべてのビットコイン取引所が国への登録を行い、政府による各種指導やガイドラインを遵守し運営しなければなりません。

主な規制内容としては、名義貸しの禁止や情報の安全管理、利用者の保護等に関する措置が挙げられています。これらの規制を順守することにより、より透明性の高い取引を実現するとともに、ビットコイン利用者の安全確保を図ることが可能となりました。

f:id:urj:20170517183024j:plain

「仮想通貨法」によって守られる消費者

仮想通貨法の制定により、特にビットコイン利用者の保護が強化されたことは喜ばしいことではないでしょうか。

世界最大の交換所であった株式会社Mt.Goxの経営破たんにより多くの利用者が多大な損失を被った事件を契機として利用者保護の早急な法制化が叫ばれていましたが、今回の「仮想通貨法」施行によりようやくそれが実現したということになります。

では、利用者保護の観点からこの仮想通貨法を見てみましょう。

利用者への説明・情報提供義務

ビットコイン取引事業者から利用者に対し、取引判断に必要な正確な情報を提供することを義務付けています。

例えばレバレッジ取引を提供する場合などは、レバレッジ取引によるリスクの大きさなども適切に説明する必要が生じるということです。また利用者がしっかりと内容を理解した上で取引に進むようなweb上の申し込みフローを構築するなどといった取り組みが必要となります。

利用者財産の管理義務

ビットコイン取引事業者は、自社が保有する仮想通貨と利用者の仮想通貨を明確に区分できるように管理しなければならないと規定されました。

これにより、経営危機などにより利用者の資産が失われてしまうことを防止することが義務付けられたのです。

「仮想通貨法」施行に伴う業界の変化

このように、仮想通貨法の施行はビットコイン業界におけるさまざまな動きを加速させることとなります。同時に、ビットコイン以外の仮想通貨の流通も促進させることとなるでしょう。

実際、三菱UFJフィナンシャルグループやみずほフィナンシャルグループが独自の仮想通貨発行を計画しているといった報道もなされています。このように仮想通貨関連取引の活性化に伴い、ブロックチェーン技術を提供しているITサプライヤーも業務増大が予測されており、ブロックチェーン技術に精通したエンジニア不足が懸念されているようです。

あわせて、物販やサービス提供事業者側にも大きな変化を余儀なくされます。仮想通貨決済システムの導入やビットコイン利用に対応した会計システムの導入など、特にIT面の投資が増加していくでしょう。飲食チェーン店などを中心に大規模なIT投資が行われる可能性が高まります。

まとめ

仮想通貨法の成立は、これまでグレーだったビットコインの扱いを、国が正式に「決済手段として利用可能な通貨」として認めたことになります。

公平で公正な取引環境の実現とともに、利用者の保護や資産の取り扱い、あわせてIT化の推進など、今後さまざまな動きが加速し、ビットコインの流通に関する環境整備が進むでしょう。エンジニアとしてはビジネスチャンスにもつながる仮想通貨法の成立。今後の成り行きを注意深く見守っていく必要がありますね。

(C)centsysjp's blog All Rights Reserved.
  • システム開発にお困りの方
  • センティリオンシステムの求人はこちらから